『威風堂々 幕末佐賀風雲録』伊東潤著(中公文庫)

やぎ散歩
DSC_0807

『威風堂々』読了しました。

本書は早稲田大学の創設者であり、幕末の佐賀藩の生んだ最高の偉人である大隈重信。彼の目線でその生涯を追うことで、幕末〜大正までの歴史を見ていくことができます。

やぎ氏は小学生、中学生の頃は、戦場で大活躍する英雄・武将・将軍・提督の伝記を読むのが大好きでした。三国志の曹操や諸葛亮、日本の源義経や上杉謙信、ヨーロッパでもナポレオンやハンニバルなどです。

ですがおじさんになった今では、もっぱら実業家や政治家、農政官として活躍した人の伝記や小説が面白くて読んでます。渋沢栄一、岩崎弥太郎、新渡戸稲造、後藤新平、商鞅などです。

大隈重信は幕末には志士として殆ど、活躍していませんし、戊辰戦争でも幕府軍の兵士を一人も倒していません。

しかし、その英語力と決断力で軍人らが戦ってるいる間、長崎で欧米諸国の外国人と渡り合っていました。

そして、これは武将や将軍たちの伝記でもそうですが若き日の勉強に励む時代や小さい仕事をまかされながら徐々に出世していくストーリーを読んでいくのは楽しいです。

大隈重信だと、藩校時代に佐賀藩の聖典とも言える『葉隠』や『論語』を学ばされるのに嫌気がさして、「実学(語学や医学、科学などの実践的な学問)を学ばさせてくれ!」と学校で問題を起こしたり、長崎に英語教師をしてくれる人を探しに行き、あてがなさすぎて途方に暮れ、友人から貰った餞別を握りしめて呑みにいく場面など、末席時代の話が面白かったです。

最後に面白いだけでなく、学びになった部分を紹介します。

①大隈は「至らぬ者」を演じることができる。人というのは皆、自分が優秀だと他人から見られたい。だが「至らぬ者」を装うことで、周囲から好感を持たれることを、大隈は知っていた。

②大隈は思い立ったらすぐ行動に移す。何事も後回しにすると情熱が薄れてきて、行動に移さない理由を考えてしまうからだ。

③『葉隠』には「七息思案」という言葉がある。「七つ呼吸する間に決めろ」という意味で、長く思案してもろくなことはない。という教え。

④『葉隠』「今という時がいざという時である。いざという時は今である。」普段できない事はいざという時にもできない。という教え。

⑤「剣術もほどほど。勉学もほどほど。『まぁ、そのうち』と思いながらここまで来た。まさか自分が早死にするなど考えもしなかったからだ。」「人生は短い。のんきに生きるな。」空閑次郎八、享年二十五

⑤の場面は特にぐっときました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました